グラナダ版ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険 三破風館」の感想です。
ストーリーに関わるネタバレを含みますので、苦手な方はご注意ください。
続きからです
冒頭は人間闘牛のシーン。人間が牛の被り物をして、別の闘牛士に扮した青年に向かって突っ込んでいく、というパーティの催しものです。面白いのか、盛り上がるのか、これ。と思いますが、観客はけっこう楽しそう。そういう時代なのかな。
中でも一際目立つ女性に牛役の青年は近寄っていき、被り物を脱ぎ取りますが、その顔を見た途端女性は凍りつきます。「一緒にローマに」という青年を振り払って追い出して、お付きの人に青年を袋にさせてしまいます。
ここで舞台はロンドンのホームズ宅へ。ワトソンが部屋に入るとホームズはアフリカ系のプロボクサー、ディクシーより、ハロウから手を引け、と半ば脅されていました。なんの話だ…ハロウって何だ…という私の気持ちはもちろんスルーして、彼を追い払った後話題は依頼が書かれた手紙へ。そこにはメーバリー夫人がホームズに宛てた相談事が記されていました。
早速老婦人の元へ向かうホームズとワトソン。その館のある場所こそハロウ・ウィールド!これか!
その老婦人の家に掛けられた肖像画は、冒頭の袋にされた闘牛の青年のもので、それはワトソンの後輩でもありました。彼は死んでしまった、と老婦人から明かされます。イタリアに行っていたが、ひどい怪我をして帰ってきて、脾臓破裂がもとで肺炎を起こし、亡くなったとのことでした。
しかし老婦人は孫の死を悼んではいたものの、ホームズに相談したいのは別のことでした。
自分の住むこの三破風館を、言い値でいいから譲ってほしいと持ち掛けられたというのです。手に入れたときの10倍もの額でも思うまま。夢の世界旅行だってできる。しかし話がうますぎて逆に怖い。弁護士に相談すると、屋敷に残るすべてのものを渡すように条件が添えてある、と指摘を受けました。なんでそんなことが必要なのかわからない。あやしい。
そんな話をしていると、メイドの婦人が聞き耳を立てていることにホームズは気が付きます。彼女は他の誰かに雇われて(二重雇用だ…)屋敷で得た情報をどこかに流しているようでした。そのメイドはホームズに言い当てられてしまって去りましたが、警戒を強めたホームズは一晩ワトソンに館の番をさせることにします。そして自分は、ロンドンで「女性に詳しい」というゴシップ記事執筆者パイク氏に屋敷で発見した顔の潰された肖像画が誰なのか聞きに向かいました。
このパイク氏は他の話でも出てくる人らしく、にわかホームズファンの私は知らなかったけれど「犯人は二人」などの話でも登場するのだそう。袖がフリフリのおじさんですが、当時の社交界のスキャンダルって、すごく情報として価値があったんだろうなあ。今で言えば芸能界のようなものでしょうか。そして教わった名前は、イザドラ。公爵と最近婚約をした女性でした。そして彼女こそ、冒頭で闘牛の青年をひどい方法で振った彼女でした。
若い公爵は彼女に夢中でしたが、その様子を見つめる公爵母の瞳は冷たいもので、ホームズに、彼女に関わるどんな醜聞でも公開してかまわないと告げます。しかしホームズは「醜聞は避けられるはずですよ」と彼女に言い残しました。
そのころワトソンはメーバリー夫人と彼女の思い出話に花を咲かせていましたが、突如暴漢が襲ってきます。暴漢はワトソンに重傷を負わせ、老婦人が握りしめていた手記を奪って去っていきました。その手記こそが、彼女に恋をした青年が、哀れに捨てられ、重傷を負わされ、死の床で書いた私小説で、イザドラの暴露本でした。
その殆どは暴漢によって奪われましたが、最後の一ページはメーバリー夫人が握りしめて残っていました。
イザドラによって捨てられ、袋にされて、その傷がもとで肺炎を起こして死んだなら、それは殺人だ、とワトソンは言います。しかし、その最後のページを持ってイザドラと面会したホームズは、婚約の破棄とメーバリー夫人へのせめてもの補償金と引き換えに、事件について黙っていることを約束するのでした。
うーん、最初は誰だあのボクサー…から始まりましたが、最後は全部つながってくる構成がすごいですね。余分な情報がほとんどないんだなあ!最初の豪華なパーティから、ボクサーからの忠告も、老婦人からの依頼文も、怪しいメイドの行動も、最後は一つの事件につながってくる。
でも脾臓の破裂から肺炎が起こるかなあ、とも思いました。脾臓の機能不全により免疫が低下し、病気にかかりやすくなったことで風邪などの感染症でも重症化して肺炎に至ったってことかなあ。だとしたら、故意ではないだろうし、それを殺人と断罪するには酷な気もするけど。いや、どのみち自分の都合で捨てておきながら暴力的な手段で排除した時点で酷だけど。「立証できない」とホームズが言っていたのもこのあたりが原因なのかな。
原作の方は読んだことがないですが(…)人影の写りこむガラスやステンドグラスなど、光の演出が綺麗な一本でした。
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